世界に優しい"Zero Waste" な意識や気づきを Kyoto から

2021年8月号

 
IMG_6373.JPG

“Zero Waste” ってどういう意味? 簡潔に答えるとするなら、その一つは「ゴミをゼロまで減らす取り組み」だろうか。私たちが暮らすこの地球が、予断を許さない環境危機に追い込まれているという事実を見聞きする中、これまで「当然」としてきた、大量生産・大量消費に頼るライフスタイルに「?」を感じ始めている人も少なくない。

“Zero Waste” の意味をもう少し深く考えてみると、「システムの再構築」と「マインドの再定義」とも言えるのではないだろうか。地球から資源を得て、数えきれないほどのモノを生産し、それをほんの短い期間、使用や消費する。そのあとはゴミ箱に捨てれば、ゴミは知らないうちにどこかに「消えて」いる。こうした、便利で簡単に生産や消費ができるライフスタイルが、ずっと続くと思っていた(もしくはそう信じていたかった)。しかし、それは幻想だと誰もが気づき始めている。

日本は、食品ロスにおいて世界五位の国であり、年間一人当たり廃棄する職人の量は150㎏に及ぶ。プラスチックゴミの排出量でも世界五位を占め、年間800万トンものプラスチック廃棄物を生んでいる。“Zero Waste”というコンセプトを知ることは、こうした慣れ親しんだサイクルから脱却し、次の新しいシステムに向かうことを意識することでもある。「サーキュラー(循環型)エコノミー」と呼ばれる、自然やほかの生き物すべてと共存し、資源やモノが余すところなく活用され、無駄にされない、そんなシステム。ゴミとして捨てるのではなく、もう一度システムに戻す方法を考える。そうすることで、現行のパラダイムを再定義するきっかけが生まれる。

Photo 2021-06-14 13 58 39.jpg

今年5月、「システムの再構築」と「マインドの再定義」のきっかけとなる素晴らしい一歩が京都御所からほどない、寺町通で踏み出された。広く開け放たれた Zero Waste Kyoto のエントランスの前を通れば、店内に並ぶ品々やそのディスプレイに興味を惹かれずにはいられないだろう。

「オーガニック」「フェアトレード」「自然」「手作り」をキーワードに、米、穀物、有機野菜、豆腐、味噌、納豆、梅干し、キムチ、焼き立てのパン、お茶、お酢などなど、たくさんの食品が揃う。誰がどこで作ったものか、どんなところが特別なのか、一番おいしい食べ方は、など、商品の裏側にあるストーリーを、スタッフが嬉々として語ってくれる。

店内を見て回ると、Zero Wasteを意識するための「マインドの再定義」のヒントがたくさん見つかるだろう。地元の畑で採れた野菜は、ビニールではなく、冷たい水の中や新聞紙に包まれて、惜しげもなくその瑞々しい姿を見せている。豆腐は、木桶の水の中ですくい上げられるのを待ち、米や穀物はガラス瓶に詰められ、スタイリッシュに壁に並ぶ。購入のときには、持参した容器を下にセットして、欲しい分だけ購入できる。

店の奥には、カフェスペースとデリも併設されている。ショーケースには、バラエティに富んだ惣菜や調味料、スイーツなどが並ぶ。イートインでは、ランチセットはもちろん、気になる惣菜だけを注文することも可能。とろとろの野菜スープは、今どの野菜が旬を迎えているのかを舌から教えてくれる。フレッシュで野菜の甘味にあふれるサラダは、有機野菜にこだわった土に育まれた栄養がたっぷり。

IMG_0359.JPG

「うちで仕事をしてくれているスタッフ全員、ここで販売している商品のことなら何時間でも話せます。作るモノにこだわりと信念のある生産者さんやお店の方から教えていただいたことをお客様に伝えるのが大好きなんです。作り手の愛と信頼を、お客様におつなぎするのが私たちの仕事です」と語るのは、Zero Waste Kyoto 代表の植良睦美さんだ。

「今の時代、人々が伝統や暮らしの美しさを尊び、それらと共に生きているというのはとても稀有なことだと思います。そして、京都ではそれが当たり前に行われていると感じます。私たちの最初のZero Wasteをコンセプトとするお店をオープンする場所に、京都以上にふさわしい町はないと確信がありました。人々の日々の暮らしの中に、“本物”のクオリティが介在しているのが京都だからです。高校を卒業して以来、関西を離れて東京や海外で30年近く暮らしてきました。東京では、多忙で動きの激しい金融業界に身を置いていましたが、いつもどこかで、関西、特に京都への望郷を感じていました。数年前、伝統と歴史の息づく京都の町に移ってきたとき、心がほっとしたことを覚えています。“地産地消”を実践するにも、京都のほうが構えずに、日々の中で続けられるように思います」と語る。

Zero Waste は、ゴールではなく、私たちの暮らし方、生き方が、環境や自分以外の存在にどんな影響を与えるかを考えるスタートだ。Zero Waste Kyotoは、京都初のZero Wasteをコンセプトとする店であること、そこで美味しくてローカルな商品を紹介・販売していることを誇りに思いつつ、まだこれはスタート地点である、という挑戦の気持ちも忘れず、どうすればZero Wasteのシステムをもっと向上できるか、楽しみとともに真剣に考え続けている毎日だという。お気に入りの容器やバッグ、さらにはZero Wasteのアイデアと一緒に、Zero Waste Kyotoに足を運んでみてほしい。古いシステムを再構築し、私たちのマインドを再定義するためのインスピレーションがたくさん沸いてくるに違いない。

Photo 2021-07-21 11 47 21.jpg

10:00-20:00, 月曜定休

京都市中京区寺町通夷川通上ル 久遠院町673-1

075-366-4143

https://zerowaste.kyoto

Previous
Previous

木と語り合い、木の声を聴く   

Next
Next

サステナブルでローカルなツーリズム