木と語り合い、木の声を聴く   

日本産木材への愛から生まれる、未来につながるサステナブルな家具

2021年8月号

 
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京都府の最北端の町、京丹後市に1960年に創業したのは、建具屋がルーツという溝川家具店。家具店を営む家に生まれ育った代表の高杉鉄男さんは、小さいときから職人が匠の技で家具を作り上げていく様子を見るのが大好きで、心の底から魅了されていたという。

自社の職人が手がける家具の品質や技術の高さはもちろんのこと、その背景にある理念こそ、高杉さんが伝えたい思いそのものが詰まっている。

自社が属する産業の現状に加えて、さらに広く、深い視線で、世界全体の未来についても思慮する高杉さん。掲げる「Green Leaf」の理念や「KIKOE」シリーズに、彼の考えや信念が表れている。シンプルで循環型のライフスタイルこそが、豊かな心を育むのであり、「里山」や「もったいない」などの日本独自の文化や考えを生み出した源でもあると、強く信じている。

溝川家具店オリジナルの家具シリーズ「KIKOE」は、杉、ヒノキ、松などの日本産の木を使って作られる。古来より、日本人は木とともに暮らしてきた。日本の固有種である杉は、温かみを感じさせる手触りに加えて、温度や湿度の調整や、オゾンや二酸化炭素の吸収もしてくれる。奈良の正倉院が所蔵する、1300年以上前も宝物を保管してきた木箱も杉だ。

日本人が古くから慣れ親しんできた、さまざまな日本の木材を使った家具を作りたいという思いから生まれた「KIKOE」のキーワードは、「木に直接触れ、木のぬくもりを感じること」。同時に、現代のライフスタイルにあったスタイリッシュなデザインも兼ねそろえている。

ほとんど釘を使用しない構造は、建具屋だったころの技術を継承している証拠。塗料も極力使っておらず、木の本来の手触りをそのまま感じられる。ところで、扉や引き出しには、取っ手や出っ張りがないのだが、一体どうやって開けるのだろうか?答えは、引き出しなどを軽く押すこと。つまり、木に触れないと開けられない。一度その心地よい感触を知ると、用がなくてもつい木に触りたくなってしまう、そんなきの魅力を教えてくれる構造になっている。もちろん、その背景にあるのは、溝川家具店の職人たちの確かな技だ。「うちの職人たちは、木の声を聞き、木と会話して仕事をしています」と、誇りを持って語る高杉さんだ。

高杉さん自身は家具職人ではないが、その代わりに、自社の職人が作った家具をPRする最高のプロモーターとして日々仕事に励む。「私の仕事は、職人がお客さんのために夢中になって作るようなオーダー家具の需要を作ること」と話す。

異なる業種や分野から新しいアイデアやインスピレーションを得ることにも積極的で、その取り組みの一つに、DESIGN WEEK  TANGO への参加がある。

 
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Green Leaf の理念

日本の国土の約7割が森林です。その内訳は5割が天然林で4割が人工林 残りの1割が竹林などです。この人工林のほとんどは 比較的に成長の早い杉、桧、松などの針葉樹で、戦後の国策により植えられたもので30年から50年経っており収穫期をむかえています。しかしながら現状ではコストや人材不足で間伐が進んでいません。

京都府においては、年間4千㎡の間伐が行われていますが、大半は山中に放置されており、結果として間伐材の利用が進まず森林の荒廃が進んでいます。森林整備を行うことで、土砂災害の防止、温室効果ガスの削減機能、動植物や川、海の生態系の健全化になるのです。

一方、地球規模では年間に日本の国土の4分の1の森林が消失しており、外国産木材の輸入大国であるという皮肉な現実があります。

石油や電気もガスもない平安時代の暮らしはどうだったのでしょう? 身近にある材料や素材を活かしきるものづくりや、必要な時に必要な量だけ供給するしくみ、長く使われるためのデザインが組み込まれ、見えないところ 目立たないところまできっちり仕立て 手間暇かけたモノがたくさんありました。循環型の質素な暮らしが豊かな心を育み 今に伝わる文化を生み出した土壌になったと思います。

京都議定書が採択されたこの地に住む私たちが、率先して物質的な豊かさから決別し 文化的な生活のあり方を発信すべきではないでしょうか?このような「経済」と「環境」が両立する秩序の構築が必要と考えるGreen Leafの理念です。

また、民間会社の調査によると職人の人材不足は さらに高まるであろうと予測しています。例えば煉瓦職人、大工、高級家具職人、石工、溶接工などです。ものづくりの伝統は文化的遺産と同じく 一朝一夕には作り上げることができません。そしていったん途切れると再生は難しいのです。職人の熟練した技と最先端のテクノロジーが共存して豊かさを共有できる社会になればいいと思います。

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