The Japanese Art of Touch

指圧が教えてくれる、体のこと・こころのこと

2021年8月号

 

日本の伝統的なホリスティック(総合的)療法「指圧」。英語では文字通り「Finger Pressure」と訳されることもある。私たちの体には、エネルギー(日本語で「気」)の通り道があり、そこには数えられないほどの「ツボ」が存在する。指圧は、ツボを刺激することで人の身体に本来備わった治癒力の維持や強化を促すセラピーだ。

指圧師は、親指や手のひらはもちろん、肘や膝、時には足も使って、人の身体に点在する「ツボ」や「経絡」と呼ばれる特定のポイントを刺激し、それは、患者と呼吸を合わせ、まるで一体であるかのように行われる。ツボの滞りを解消し、気の流れを促進することで、ストレスの軽減、血液やリンパの循環・神経伝達・内蔵機能などの向上、ホルモン分泌の調整、免疫の強化、心身の統合など、身体的・精神的に数えきれないほどの効果があると言われている。

 

京都出身、現在はフランスのランスで指圧セラピストとして活躍する水口洋子さん。彼女が語る、指圧の魅力とは? 指圧が彼女の人生にもたらしたこととは?

Make it stand out

KVG:指圧セラピストになろうと思ったきっかけは?

Hiroko:幼い頃、両親が肩こりに悩まされていて、よく肩を揉んでほしいと頼まれていました。 私が肩に触れることで、揉まれている側の両親だけでなく、私も穏やかな気持ちになり、気持ちよさを感じる瞬間があることに気づきました。 そのときは、指圧についてなどもちろん全く知らない小さな子供でしたが、「触れる」ことに特別な力があると、そのときから感じていました。

京都外国語大学を卒業後(学生時代はKVGを愛読していました!)、企業に勤めたり、フリーランスの通訳として仕事をしていました。その後、中国系フランス人の夫と結婚し、13年前に双子の子供を授かりました。 8年間、上海に住んだあと、2014年からここ、フランス東部のランスに暮しています。

これまでの人生では、嬉しいことも辛いことも含めて、いろいろな出来事がありました。 時には、大切な家族や身近な人の死に直面しなければならないときもあり、 それは私にとって本当に悲しく、困難なことでした。でも、その経験は同時に、私に、生きるということについて考える機会でもありました。私達誰もが、いつかは亡くなります。辛い思いをしている人が身近にいたら、その人に寄り添い、思いやりや優しさをもって、自分にできることを精一杯することが、人生のやりがいや幸せにつながるのだと感じています。

 

上海在住時には、フットリフレクソロジーを学び、セラピストの資格を取得しました。 その後、フランスで本格的に指圧の道に進むことを決意しました。 4年間の勉強と研修の期間中、指圧について学んだり実践したり、すればするほど自分自身の健康状態も大きく改善されていくことに気づきました。 指圧が私たちの健康に貢献できる、無限の可能性を秘めていることを、自分の身体と体験で確信できる期間でした。そして、指圧はすぐに私の生活に欠かせないものとなりました。

KVG:指圧の素晴らしさを表現するとしたら?

Hiroko:指圧は、人を助けることができる最も穏やかな技法の一つだと思っています。 現在、ランスにあるルネッサンスセンターというところで指圧セラピストとして仕事をしていますが、妊婦さんから小さな子供まで、指圧を通して様々な問題を抱えた人々に出会います。定期的に老人ホームを訪問して、高齢者の方に指圧を受けていただくこともあります。 指圧は全く難しいものではありません。むしろ、とてもシンプル。シンプルでありながら、周りの人や自分自身に平穏を与えることができるところが素晴らしいです。

指圧は単に痛みを和らげたり、不調を改善したりすることだけを目的にしているのではありません。ご縁があって出会えたすべての患者さんに、思いやりを持って接するようにしています。あるときは一人の女性として、またあるときは誰かの子供や妻や、母として、違った目線でお話しします。 東洋療法に興味を持って来てくださった方にお会いできるのはとても嬉しいことですが、それ以上に嬉しいのは、その方が指圧を通して自分の身体や心に気づくことができたと感じられたときです。

指圧は、人と人との間に調和を生み出すユニバーサルな療法です。私たちの健康を増進してくれるだけでなく、気持ちに平穏や調和を生み出します。どんな時代になっても、人と人との触れ合いはなくなりません。指圧セラピストとして、指圧を通して愛や平穏を伝えていきたいです。また、世界のほかの指圧セラピストやヒーリングに長けた人たちとコラボレーションして、私たちセラピストが世界に調和を広めていけたらもっと楽しいですね!

 

フランスのランスで指圧師の免許を取得。フランス指圧師組合所属。パリにある市川敏秀氏主宰の School of Do-In and Shiatsu でアシスタント講師を務める。

プライベートでは、夫と双子の子供たちと共にオーガニックで穏やかな生活を楽しんでいる。指圧以外の趣味は、フランスの山に登ることと、ヨーロッパの温泉地を訪れること。

「自分らしく生きるために、できる限りオーガニックでピースフルな生活を心がけています。」 家族で畑仕事にはげみ、土に触れ、新鮮な空気をいっぱい吸い込んでリラックス。野菜の収穫の時に、みんなで大盛り上がりするのが一番の楽しみ。

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