文化から生まれるサーキュレイティブでサステナブルな“1000年ビジョン”

2021年3月号

 

COS KYOTOのCEOを務める北林功氏は、地場産業とそこから生まれるビジネスの可能性に魅せられているという。自らを"文化事業コーディネーター" と位置付け、京都を中心にさまざまなプロジェクトやビジネスに関わっているが、「文化事業コーディネーター 」とは一体どんな仕事なのだろうか?

「日本のモノづくり に携わる人達は、世界にも誇れるような素晴らしい技術や経験を持っています。しかし一方で、悲しいことに、僕たちは大量生産された安価な製品が主流な世界に生きています。多くのものを安く手に入れることに慣れてしまうと、たとえ価格が品質の良し悪しや生産者の高い技術力の指標であることを頭では理解していても、質の高い製品にお金をかけることを躊躇してしまいます。その結果、職人や技術者が生き残ることが難しくなってしまったのです」と語る北林さん。

そこで必要になるのが「文化事業コーディネーター」だという。経営する COS KYOTO では、メーカーや職人に、経営計画の提案、ブランディング、商品開発、国内外の市場調査・開拓など、総合的なサービスを提供している。言い換えれば、地域の産業を現代社会に適した形でアップデートできるサービスだ。

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「僕のビジネスの原点であり、また個人的な願いでもある、最終的に目指すものは、地球環境の現状を改善したいという思いです」と言い切る。「46億年もの長い地球の歴史の中で、僕たち人類の歴史はわずか数百万年前に始まり、それは環境破壊の始まりでもあります。

特に、工業化が始まってからのこの数百年の間に、地球上の天然資源をほとんど使い切ってしまうという、信じがたい事実を作ってしまいました。科学的には理解していませんでしたが、子供の頃からそのような地球環境の危機について知るたびに、将来がとても不安になり、それが環境問題に興味を持つようになるきっかけとなりました」。

大学卒業後、京都や東京の企業に就職した北林さん。そこで得たのは、京都や故郷の奈良を別の角度から見る機会だったという。生まれ育った奈良には、1000年以上も同じ事業を営む会社があることを知る。「事業が数百年も続くということは、その事業がサステナブル(持続可能)であることをにほかなりません。それに気づいたとき、不安の闇に光が射したような気がしました」と振り返る。

京都の長い歴史と地場産業の多様性に匹敵する都市は、世界を見回してもほとんどないだろう。 しかし、職人の数が減り、職人を目指す若い世代も減ってきている現実があり、長く続いてきた多くの工場や工房が廃業を余儀なくされていっている。「京都には、技術やアイデアを山ほど持ったクリエイティブな人がたくさんいるのに、仕事や業界の枠を超えた交流がない!」そのことに気付いた北林さんは、どうすれば変化を起こせるかを考えた。

「分野、業種、肩書や国境を越えた多様な交流を生むことで、京都の創造力を高める」。2016年に北林さんと、思いを共にする有志の仲間が立ち上げたDESIGN WEEK KYOTO(DWK)の理念だ。DWKは、モノづくりや手仕事、製造業に興味がある一般の人はもちろん、職人自身にとっても違う分野の人と知り合い、交流できる貴重な機会となっている。

毎年2月に一週間に渡り開催されるメインイベントのハイライトは、「OPEN HOUSE」と呼ばれるイベントだ。期間中、普段一般には公開されていない京都の工場や工房、モノづくりの現場がオープンになり、興味のある人誰でもがそこを訪ね、働く人と話をしたり、仕事を見学したりすることができる。

DWK を運営することは、畑の土を途切れることなく耕し続けるようなものです。運営はとても大変ですが、一緒に育てた土からどんな花や野菜が育つのか、毎年楽しみが尽きません。京都のクリエイティブな畑をより広く、より豊かにすることが僕の願いです。」

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Isao Kitabayashi

株式会社COS KYOTO 代表取締役

DESIGN WEEK KYOTO ファウンダー

サーキュレイティブでサステナブルな社会の構築を目指す「文化事業コーディネーター」として活動。2016年にDESIGN WEEK KYOTOを設立。地場産業の振興を通じ、共通の目的を持った人々が社会に貢献する「コミュニティ」の形成を目指し、さまざまなプロジェクトやイベントに携わっている。

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