文化から生まれるサーキュレイティブでサステナブルな“1000年ビジョン”
2021年3月号
COS KYOTOのCEOを務める北林功氏は、地場産業とそこから生まれるビジネスの可能性に魅せられているという。自らを"文化事業コーディネーター" と位置付け、京都を中心にさまざまなプロジェクトやビジネスに関わっているが、「文化事業コーディネーター 」とは一体どんな仕事なのだろうか?
「日本のモノづくり に携わる人達は、世界にも誇れるような素晴らしい技術や経験を持っています。しかし一方で、悲しいことに、僕たちは大量生産された安価な製品が主流な世界に生きています。多くのものを安く手に入れることに慣れてしまうと、たとえ価格が品質の良し悪しや生産者の高い技術力の指標であることを頭では理解していても、質の高い製品にお金をかけることを躊躇してしまいます。その結果、職人や技術者が生き残ることが難しくなってしまったのです」と語る北林さん。
そこで必要になるのが「文化事業コーディネーター」だという。経営する COS KYOTO では、メーカーや職人に、経営計画の提案、ブランディング、商品開発、国内外の市場調査・開拓など、総合的なサービスを提供している。言い換えれば、地域の産業を現代社会に適した形でアップデートできるサービスだ。
京都の長い歴史と地場産業の多様性に匹敵する都市は、世界を見回してもほとんどないだろう。 しかし、職人の数が減り、職人を目指す若い世代も減ってきている現実があり、長く続いてきた多くの工場や工房が廃業を余儀なくされていっている。「京都には、技術やアイデアを山ほど持ったクリエイティブな人がたくさんいるのに、仕事や業界の枠を超えた交流がない!」そのことに気付いた北林さんは、どうすれば変化を起こせるかを考えた。
「分野、業種、肩書や国境を越えた多様な交流を生むことで、京都の創造力を高める」。2016年に北林さんと、思いを共にする有志の仲間が立ち上げたDESIGN WEEK KYOTO(DWK)の理念だ。DWKは、モノづくりや手仕事、製造業に興味がある一般の人はもちろん、職人自身にとっても違う分野の人と知り合い、交流できる貴重な機会となっている。
毎年2月に一週間に渡り開催されるメインイベントのハイライトは、「OPEN HOUSE」と呼ばれるイベントだ。期間中、普段一般には公開されていない京都の工場や工房、モノづくりの現場がオープンになり、興味のある人誰でもがそこを訪ね、働く人と話をしたり、仕事を見学したりすることができる。
DWK を運営することは、畑の土を途切れることなく耕し続けるようなものです。運営はとても大変ですが、一緒に育てた土からどんな花や野菜が育つのか、毎年楽しみが尽きません。京都のクリエイティブな畑をより広く、より豊かにすることが僕の願いです。」